エンジニアが解説するマスタリングの方法とおすすめソフト4選

取材協力
有限会社フラクタル・デザイン ライター&エンジニア 中村太樹さん

「マスタリングソフトでおすすめは?」「そもそもマスタリングって?」「音圧や音質の調節で注意するところは?」……、などマスタリングについての疑問にお答えします。さぁマスタリングを始めましょう!

目次
マスタリングとは?
現役エンジニアが教える、マスタリングの手順
おすすめのマスタリングソフト

マスタリングとは?

本来はプレス用のマスターを作る作業

コンソールで作業するエンジニア
本来マスタリングという言葉は、レコードやCDを工場で生産するためのプレス用マスターを作るという意味で使われていました。ですが、現在ではミックスダウン後の2mixになった楽曲の音質や音量、曲間の長さの調節……など、プリマスタリングの意味でマスタリングと言っていることがほとんどです。また最近では、CD以外にネットを通じて音楽を発信することも多くなり、ネット配信用のデータを作る作業もマスタリングの一種といえるでしょう。

マスタリングが必要な理由① 複数の楽曲を1つの作品にする

では、なぜマスタリングが必要なのでしょうか?楽曲が完成して、レコーディングが終わり、ミックスダウンを終えれば、基本的にその楽曲は完成です。が、複数の曲をアルバムとして制作する場合、曲間の調節や音質や音量の調節が必要になってきます。

たとえば、1曲目が激しい曲で、2曲目が静かな曲の場合に、ちゃんと音量調節がされていないと、2曲目の音量が小さすぎて、リスナーがいちいちボリュームを操作しなくてはならなくなってしまいます。また、曲間が長すぎたりすると、なかなか次の曲が始まらず、リスナーの集中力が持ちません。曲間は、曲の聴かせ方を左右する大切な要素でもあるので、しっかりと調整したいところです。

マスタリングが必要な理由② 制作者の意図どおりに再生されるための音質調整

音楽はさまざまな環境で聴かれます。ポータブルプレイヤーで聴く人、スマホでのスピーカーで聴く人、イヤホンまたはヘッドホンで聴く人、家にあるスピーカーで聴く人、もちろん車の中で曲を聴く人もいると思います。そのため、マスタリングではどんな環境で聴いても、制作者が意図したイメージが伝わるようにするための音質の調節も重要な作業といえるでしょう。

といっても、マスタリングは何から始めたらいいか分からないものです。そこで今回は、マスタリングの具体的な手順と共におすすめのマスタリングソフトを紹介していこうと思います。

現役エンジニアが教える、マスタリングの手順

作業中のレコーディングエンジニア

①各トラックを2mixで作成する

まずは、2mixのデータを用意します。自分でミックスしたデータを使う場合でも他人がミックスしたデータを使う場合でも、最終のバウンスを行うときにマスターに挿さっているダイナミック系のプラグインは外しておくといいでしょう。

このときに、ピークが点いていたりして、2mixデータに音量が詰め込まれていると、マスタリング用のプラグインが効果的に機能しないので注意してください。また、ノーマライズ機能などはオフにしておきます。

サンプリングレートとビットデプスは高めに設定

2mixデータを書き出す際は、環境にもよりますがサンプリングレートとビットデプスは高めに設定しておきます。とりあえず、WAVEで48kHz/24bitあたりでいいでしょう。一度、ハイサンプリングレート/ハイビットで書き出してみて、エフェクトの掛かり方を比較するのも面白いですよ。

後は、サンプリングレートやビットデプスを書き出した音源と同じにしたマスタリング用のプロジェクトを立ち上げ、2mixを並べていきます。その際に、お手本となるリファレンス音源も準備しておくと、完成形を見失うことなく、作業を行えます。

②各プラグインを設定する

2mixの読み込みが終わったら次は、各プラグインを設定していきます。エフェクト系のプラグインをインサートする前に、まずマスターに音圧調節のために参考にするRMSメーターをインサートします。このRMSメーターというのは、人間の耳の音量感と似ているメーターで、さまざまな種類がありますが、できるだけ細かくレベルを見ることのできるタイプを選ぶといいでしょう。

また、RMSメーターが-10dB前後に振れる楽曲はちょうどいい音圧ですが、-6dBを超えるようなら少し音圧が高すぎます。リファレンス音源の音圧感を参考にしたり、いろいろ曲をRMSメーターで見てみると、感覚を掴めて来ると思います。

音質調整におすすめのプラグイン「スペクトラムアナライザ」

音質調整を始める前にインサートしておきたいプラグインとして、スペクトラムアナライザというものがあります。これは、周波数を可視化してくれるプラグインで、DAWの初期プラグインの中にあったり、無料でダウンロードできたりします。

基本的には自分の耳で音質を調節したうえで、スペクトラムアナライザでも確認するという使い方がいいでしょう。たとえば、聴いているだけでは気づきにくい低音のチェックには、スペクトラムアナライザを活用するといった感じです。また、人は音量が下がると低域と高域の感度が落ちる傾向にあるので、人の耳の特徴を考慮することが大切です。

③楽曲の質感を統一する

楽曲の音圧や音質を調整する前に、マスタリングだけで音を良くすることはできないということをぜひ覚えておいてください。マスタリングで何とかなるということはなく、やはりいいレコーディングと適切なミックスが「良いサウンド」を作る近道なのです。あくまでも、マスタリングは楽曲を完成させる最後の微調整なんです。もし、自分で打ち込みやミックスをしていて、マスタリングで問題点に気づいたときは、一度立ち戻ることも大切です。

マスタリング初心者にはiZotopeの「Ozone」がおすすめ

さて、具体的なマスタリングについてですが、初めて音圧や音質を調整する人にとっては何から始めればいいか分からないものです。歌モノ系なのか、打ち込み系なのか、あるいは生音が多い楽曲なのか、はたまたインスト系なのか……。もちろん楽曲ごとにどうすればいいか変わってきます。

そこで、一つ参考になるのがOzoneというプラグインです。これは、iZotope社のマスタリングプラグインで、機能の一つにトラックアシスタントという自動で音圧や音質を調整してくれる便利なものがあります。EQ、Dynamic EQ、Comp、Exciter、Vintage Limiter、Maximizer、Stereo Imagingなどを自動で設定してくれて、それがどうなっているのか確認できるので、一つの指標になると思います。また、いろいろな人のマスタリングをマネして試行錯誤を繰り返すことで、マスタリングの感覚を身に着けることができます。ちなみに、Ozoneは無料の体験版があるのでとりあえずインストールしてみるといいですよ。

マスタリングには明確なコンセプトを持って

ミックスと同様にマスタリングも明確なコンセプトを持つことが大切です。さらに客観性も大切な作業となるので、リファレンス曲と比較して気づいたことはメモを取るようにすると作業の整理ができるようになるので、ぜひメモを取ってみてください。そして、プラグインをオンオフして元のミックスよりいい作品になったか、アルバム全体の音量差がありすぎではないか、雰囲気はコンセプト通りになっているか、各曲を比較しながら完成させていきましょう。

音質や音圧の調整が終わったら、次に曲間の調整です。まず、曲の最初には0.2~0.5秒前後無音部分を入れておきます。これは頭が切れて再生されないようにするためのものです。また、次の曲に移るときの曲間は、曲が終わった後に無音部分を入れて調節します。曲順通りに並べて曲間が適正か聴きながら判断するのですが、集中して楽曲を聴いていると、客観的な楽曲の間隔が分からなくなりやすいので、部屋の中を歩きながら聴いたり、一回スマホなどに取り込んでいつも音楽を聴く感覚で確認するといいですよ。

④DDPファイルを作成する

DDPファイルが用いられることは、プロの現場でも普通にあるので、これについても紹介します。まず、DDPとはDisc Description Protocolの略で、マスタリング音源の音質を変化させずにプレス工場に納品するかを考えて作られた方法です。4つのファイルで構成されていて、あらゆるメディアに記録でき、マスターCD作成時に音質変化をきにする必要が無いというメリットがあります。

また、4つのファイルというのは、楽曲すべてが入ったイメージファイルのDATファイル、DDPID、DDPMSというディスクの基本情報が入ったファイルとPQDESCRというトラックインデックスやISRCなどの情報が入ったファイルで構成されています。DDPファイルのデメリットとしては、イメージファイル内の音を確認するためにDDP対応の再生ソフトが必要な点ですか。そして、このDDPファイルですがSteinberg WaveLabやStudio One、ProToolsなどを使って生成することができます。

おすすめのマスタリングソフト

iZotope Ozone 8 Advanced

自動マスタリングで話題になったトラックアシスタント機能をもつプラグイン、Ozone 8。フル機能使えるハイエンドのAdvanced、ミドルレンジのStandard、エントリーモデルのElementsの全部で3つです。サポートされているOSはMacがOS X 10.8.5(Mountain Lion)から、macOS 10.13(High Sierra)。Windowsが7~10。AAX、RTAS、VST2、VST3、AudioUnit等のプラグイン形式に対応しているので、ほとんどのDAW上で使用することができます。先ほど言ったように、エフェクトを自動で設定してくれて、それがどうなっているのか確認できる機能があるので、初心者におすすめです。
出典:Amazon
iZotope Ozone 8 Advanced
37,800円(税込)
2018年10月2日 16:29時点
価格および発送可能時期は表示された日付/時刻の時点のものであり、変更される場合があります。本商品の購入においては、購入の時点でAmazon.co.jpに表示されている価格および発送可能時期の情報が適用されます。

Steinberg WAVELAB ELEMENTS 9

メジャーなマスタリングソフト、Steinberg WAVELAB。WaveLab ProとWaveLab Elementsの二つのシリーズがあり、DDPフォーマット対応しているのはProの方だけです。細かい違いは公式ページから確認できるのでそちらを参照してください。またMac、Windowsともに対応しています。このソフトがあればマスタリングといわれる作業はすべてこなすことができます。他にも、細かい波形編集などを行えるすぐ優れものです。各メーター、アナライザ、優秀なプラグインが搭載されています。
出典:Amazon
Steinberg WAVELAB ELEMENTS 9
10,800円(税込)
2018年10月2日 16:29時点
価格および発送可能時期は表示された日付/時刻の時点のものであり、変更される場合があります。本商品の購入においては、購入の時点でAmazon.co.jpに表示されている価格および発送可能時期の情報が適用されます。

PreSonus DAWソフトウェア Studio One 4 Professional

最上位Professional版はプロジェクトページを搭載していて、そこでマスタリングソフトみたいなことができるので、まだちゃんとしたDAWを持ってないのであれば、これを選ぶのもいいかもしれません。DAWとしてもかなり使い勝手がよく、マスタリングを行えると同時にDDPインポート/エクスポートもできます。最近Studio One 4にアップグレードされ、プラグインの追加や機能の追加がされました。動作も割と軽いおすすめのソフトです。ちなみに、Mac/Windowsどちらでも使用することができます。
出典:Amazon
PreSonus DAWソフトウェア Studio One 4 Professional
43,800円(税込)
2018年10月2日 16:29時点
価格および発送可能時期は表示された日付/時刻の時点のものであり、変更される場合があります。本商品の購入においては、購入の時点でAmazon.co.jpに表示されている価格および発送可能時期の情報が適用されます。

DOTEC-AUDIO DeeMax

操作が簡単な音圧爆上げプラグインです。中央に配置されたレバーを操作するだけのだれでも使えるマキシマイザーです。TURBOボタンをオンにすると音にパンチ感が出て、SAFEボタンを入れるとサチュレーションによる歪みが軽減され、ナチュラルに音圧があがります。最近MEGA PACKというDOTEC-AUDIOのプラグインが全部入った製品が発表され、DOTEC-AUDIOのユニークで強力なエフェクトが割安で手に入るようになりました。Deeシリーズはどれも無料でダウンロードして試すことができるので、一度試してみると面白いですよ。
1番人気
出典:Amazon
DOTEC-AUDIO DeeMax
5,400円(税込)
2018年10月2日 16:29時点
価格および発送可能時期は表示された日付/時刻の時点のものであり、変更される場合があります。本商品の購入においては、購入の時点でAmazon.co.jpに表示されている価格および発送可能時期の情報が適用されます。
今回はマスタリングについて紹介しました。現代のDAWはかなり高性能なので、アマチュア環境でもテクニックを身に着ければ高いクオリティでマスタリングできると思います。何回も失敗を繰り返し、試行錯誤しながらマスタリングを楽しんでください。

あと、チェックのときにはヘッドホンやスピーカー、ときにはスマホや安い音響機器で確認するようにしましょう。冒頭で書いたようにマスタリングは、どんな環境で聴いてもイメージが伝わるようにするための最終作業です。一晩寝て翌日聴いたりして、常に客観的な視点をもって挑むと、いい結果が得られるでしょう。
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